3. 国民年金の受給額は「額面」で月平均いくらなのか
同じく厚生労働省年金局の「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」から、次は国民年金の平均受給額を抽出してみます。
3.1 国民年金(老齢基礎年金)の受給額
〈全体〉平均年金月額:5万6316円
- 〈男性〉平均年金月額:5万8798円
- 〈女性〉平均年金月額:5万4426円
3.2 【国民年金】受給額ごとの人数(1万円刻み)
- 1万円未満:6万5660人
- 1万円以上~2万円未満:27万4330人
- 2万円以上~3万円未満:88万1065人
- 3万円以上~4万円未満:266万1520人
- 4万円以上~5万円未満:465万5774人
- 5万円以上~6万円未満:824万6178人
- 6万円以上~7万円未満:1484万7491人
- 7万円以上~:178万3609人
国民年金のみでは5万6316円となりました。
厚生年金に比べると、受給額の水準は低くなります。国民年金のみで老後生活を迎えるのは難しいと感じる方も多いでしょう。
4. 厚生年金と国民年金から天引きされるお金
厚生年金と国民年金の「額面」を見ていきました。
ここからは、年金から天引きされる4つのお金を見ていきましょう。
4.1 介護保険料
介護保険料は、介護が必要になったときに一部負担で利用できる「介護保険制度」の運営のために納めるもので、40歳から納付が始まります。
64歳までは健康保険料に含めて支払いますが、65歳になると単独で支払うことになります。この介護保険料が、原則として年金から天引きされるのです。
第1号被保険者の保険料は、サービス基盤の整備の状況やサービス利用の見込みに応じて、保険者(自治体)ごとに設定します。2021年~2023年度の全国平均は月額6014円でした。
ただし、所得に応じて第1段階~第9段階まであるため、年金が多いほど天引きされる金額も多くなります。
さらに介護保険料の支払いは一生涯続きます。介護状態になれば介護保険料の支払いが終わると勘違いする方もいますが、支払いはずっと続くので注意しましょう。
4.2 国民健康保険料や後期高齢者医療制度の保険料
国民健康保険、あるいは原則75歳以上の方が加入する後期高齢者医療制度の保険料も、年金からの天引きで納めます。
「介護保険料が特別徴収になっている」など一定の条件もあるため、普通徴収(納付書や口座振替)になるケースもあります。
年金から天引きされる保険料は、ここまでの介護保険料と健康保険料です。続いて税金も確認しましょう。
4.3 個人住民税
前年中の所得に対してかかる住民税についても、年金所得が一定になれば課税され、年金天引きで納めます。
ただし保険料とは違い、収入が一定に満たなければ非課税となるため、支払わない(天引きされない)人もいます。
障害年金や遺族年金を受給する場合は非課税です。
4.4 所得税および復興特別所得税
一定額以上の年金にも所得税がかかります。公的年金は雑所得となり、65歳未満なら108万円、65歳以上なら158万円を超えると課税されます。
また「東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法(平成23年法律117号)」により、所得税の源泉徴収の際に併せて復興特別所得税もかかります。
ただし、障害年金や遺族年金を受給する場合は非課税です。
5. 年金天引き後の手取り額はいくらか
年金からは保険料や税金が天引きされるため、額面と手取りは異なることがわかりました。
では手取り額はいくらになるのでしょうか。
厚生労働省が運営する「公的年金シミュレーター」から概算してみましょう。
5.1 年収500万円「年金が174万円」の人の手取り額
22歳~59歳までの平均年収が500万円だった場合、老齢年金は年額で174万円です。月額では14万5000円になるでしょう。
このときの手取り額は年額158万円、月額約13万2000円になりました。
- 所得税:0万円/年
- 介護保険料:8万円/年
- 国民健康保険料(税):7万円/年
- 住民税:1万円/年
5.2 年収600万円「年金が195万円」の人の手取り額
22歳~59歳までの平均年収が600万円だった場合、老齢年金は年額で195万円です。月額では16万2500円になるでしょう。
このときの手取り額は年額173万円、月額約14万4000円になりました。
- 所得税:1万円/年
- 介護保険料:8万円/年
- 国民健康保険料(税):10万円/年
- 住民税:3万円/年
天引き額が22万円と大きくなり、手取りが減る様子がわかります。
※税・社会保険料額の試算結果は、年金収入のみに基づいて算定した「概算」であり、実際とは異なります。
※税・社会保険料率等は市区町村で異なるため、加入先の市区町村へお問い合わせ下さい。
6. 老後に向けて年金以外の準備も
年金は厚生年金と国民年金の2階建て構造となっており、加入状況によって個人の年金額は変わります。
さらに、保険料や税金が天引きされることにより、手取り金額も異なることが一般的でしょう。
少ない年金から引かれるお金が大きいとなれば、老後の貯蓄がある程度必要といえます。
預貯金だけでなく、民間の個人年金保険、あるいはiDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)などで備える方法もあります。
老後に向けて、自分に合う方法で対策を始めていきましょう。
参考資料
太田 彩子