2. 3年ぶりの「プラス改定」も、物価上昇には追いつけず

2023年度の公的年金が3年ぶりに改定となった公的な理由として、「賃金変動率」や「物価変動率」があります。つまり、現役世代の賃金の水準や物価の上昇が考慮された結果というわけです。

2023年度の参考指標は以下のとおりです。

  • 物価変動率:2.5%
  • 名目手取り賃金変動率:2.8%
  • マクロ経済スライド(※)によるスライド調整率:マイナス0.3%
  • 前年度までのマクロ経済スライドの未調整分:マイナス0.3%
  • 2~4年度前(直近3年度平均)の実質賃金変動率:0.3%

※公的年金被保険者の変動と平均余命の伸びに基づいて、スライド調整率を設定し、その分を賃金と物価の変動がプラスとなる場合に改定率から控除するもの

上記の参考指標を計算する場合は、以下のとおりです。(新規裁定者の場合)

  • 2.8%(名目手取り賃金変動率)=2.5%(物価変動率)+0.3%(2~4年度前(直近3年度平均)の実質賃金変動率)
  • 2.2%(年金改定率)=2.8%(名目手取り賃金変動率)+▲0.6%(マクロ経済スライドによる調整)

このため、今年の改定率は2.2%となるのです。

とはいえ、数あまたの日常生活必需品が10%を超える値上がりをしています。また、2022年12月の消費者物価指数は単月で前年同月比4.0%でした。

これらの数字を客観視しても、やはり今回の年金の引き上げ幅程度では、多くの家計にとって「焼け石に水」にしかならないと言えそうです。

ちなみに、現役世代の働き方や収入などより、老後に受け取る年金額は人それぞれです。次で詳しく見ていきましょう。

3. 【年金収入】国民年金「みんなの老齢年金、実際は月額いくらなのか」

ここで、いまのシニア世代がどのくらい年金を受給しているか、厚生労働省年金局の「令和3年度厚生年金・国民年金事業の概況」で確認していきましょう。

国民年金の平均受給額は下記のとおりです。

3.1 国民年金(老齢基礎年金)の受給額

国民年金・男女別・年金月額階級別受給権者数

国民年金・男女別・年金月額階級別受給権者数グラフ

出所:厚生労働省年金局「令和3年度厚生年金・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成

3.2 〈男女全体〉国民年金の平均年金月額:5万6368円

  • 〈男性〉平均年金月額:5万9013円
  • 〈女性〉平均年金月額:5万4346円

3.3 〈男女全体〉国民年金の受給額分布

  • 1万円未満:7万27人
  • 1万円以上~2万円未満:28万4152人
  • 2万円以上~3万円未満:90万3006人
  • 3万円以上~4万円未満:274万9550人
  • 4万円以上~5万円未満:463万6048人
  • 5万円以上~6万円未満:791万730人
  • 6万円以上~7万円未満:1500万3006人
  • 7万円以上~:187万2466人

以上のデータより、ボリュームゾーンは6万円~7万円未満です。国民年金の平均月額での男女差は月5000円程度ということが分かります。