3. 新NISAで「億り人」は達成できる?

結論から言えば、新NISAで億り人を達成するのは不可能ではありませんが、非常に難しいと思います。なぜなら、非課税で投資できる金額には上限があるからです。

新NISAでは1年間で最大360万円、合計で1800万円まで(内、成長投資枠は1200万円まで)投資できますが、これを1億円にするには、単純に5.5倍以上に増やさなければなりません。

億り人を達成できるケースとしては、例えば成長投資枠を上限まで(240万円×5年間)使って株式などの個別銘柄に投資し、その銘柄が大きく上昇するケースなどが考えられます。

銘柄によっては株価が数倍~数十倍になることもあるので、そういった銘柄を上手く売買できれば、比較的短期間で目標を達成できるかもしれません。

ただし、銘柄選択や売買タイミングによって投資結果が大きく左右されるので、豊富な経験や知識が必要となります。

大きなリターンを期待できる反面、それと同程度のリスクを背負うことになるので、投資初心者には現実的な方法とはいえませんし、プロの投資家でもそう簡単にできることではありません。

そもそも新NISAは「長期・積立・分散」を基本とする制度なので、なるべくリスクを抑えた運用が推奨されています。億り人になることにこだわらず、20年後、30年後を見据えて、コツコツと資産を積み立てていく感覚で行うのがよいかもしれません。

では、新NISAで積立投資を行う場合はどのくらいの運用結果が見込まれるのでしょうか。積立額別のシミュレーション結果を見てみましょう。

4. 【月3・5・10万円】新NISAの積立投資シミュレーション

毎月の積立額を3・5・10万円と仮定し、積立投資シミュレーションを行いました。

※運用利回りはGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の運用実績である3.99%(年率)と仮定
※実際の運用結果を保証するものではありません
※毎月の積立額が10万円の場合、15年間で非課税投資枠を使い切ります

積立投資シミュレーション

積立投資シミュレーション

出所:金融庁「資産運用シミュレーション」を基に筆者作成

4.1 月3万円・30年間のシミュレーション結果

  • 5年:198万8000円
  • 10年:441万5000円
  • 15年:737万7000円
  • 20年:1099万1000円
  • 25年:1540万2000円
  • 30年:2078万4000円
     

4.2 月5万円・30年間のシミュレーション結果

  • 5年:331万4000円
  • 10年:735万9000円
  • 15年:1229万4000円
  • 20年:1831万8000円
  • 25年:2566万9000円
  • 30年:3464万1000円
     

4.3 月10万円・30年間のシミュレーション結果

  • 5年:662万8000円
  • 10年:1471万7000円
  • 15年:2458万9000円
  • 20年:3663万6000円
  • 25年:5133万9000円
  • 30年:6928万1000円

※15年間で非課税投資枠を使い切ります

5. 新NISAだけで「億り人」を目指すのは・・・

シミュレーション結果からもわかるように、新NISAを活用した積立投資だけでは億り人を達成するのは難しいといえます。

しかし、資産を増やす方法は新NISAだけではありません。安定した運用成果を求めるなら、課税口座で他に積立投資を行ってもよいですし、iDeCo(個人型確定拠出年金)を併用するのもよいでしょう。

そもそも、なるべく堅実な方法で億り人を達成するには、投資に回す資金と投資期間の確保が必要です。そのためには、収入の増加(および支出の削減)と、若いうちからの早めの行動がカギとなります。

どうしても新NISAのみで億り人を達成したいという方は、成長投資枠をフル活用し、相応のリスクを覚悟して投資する必要があるでしょう。

ただし、「億り人」を狙って一発逆転のようなギャンブル性の高い投資は行わないよう、くれぐれもお気をつけください。

参考資料

 

加藤 聖人