3. フリーランスの仕事獲得経路として「人脈」が最多

フリーランスの実態を詳しく知らない人にとって、フリーランスはどこから仕事を得ているのか疑問を抱いている人も多くいます。

プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会「フリーランス白書2023」では「最も収入が得られる仕事獲得経路」が明らかになっています。

【図表1】によると、「人脈」がもっとも多く、「過去・現在の取引先」が続いています。

フリーランスの多くが正社員時代に在籍していた企業や当時の取引先、過去に築き上げた人脈から仕事を得ています。

近年では「求人広告」「クラウドソーシング」が充実しているため、人脈がまったくない人でも仕事を獲得できます。

とはいえ、仕事を獲得するための選択肢が限られます。また、求人を一般公開している企業であっても経験の浅い人を歓迎しているわけではなく、経験豊富な人に頼む傾向にあります。

このため、新卒フリーランスはまずはどこで経験を積むか、実績をつくっていくかが問題になってきます。

4. フリーランスの年収事情

同調査では、フリーランスの年収についても明らかになっています。

もっとも多い平均年収は「200-400万円未満」となっており、全体の3割近くを占めています。

また、「200万円未満」と回答した人も約2割と少なくありません。年収400万円未満の人は全体の半数程度になります。

近年における日本人の平均年収は450万円前後のため、フリーランスとして平均年収を達成するのは容易ではないといえるでしょう。

ただし、800万円以上の年収の人も全体の2割程度います。フリーランスとしての適正がある人であれば、会社員時代よりも稼げる見込みもないわけではありません。

5. 新卒でフリーランスになる際の注意点

ここでは、新卒からフリーランスになる際の注意点を確認していきましょう。

5.1 就労経験がないまま歳を重ねてしまうかもしれない

フリーランスとして仕事を次々に獲得し、成果を上げられれば将来的にも独立して暮らせる可能性が高いでしょう。

あるいは、さまざまな仕事を経験できれば正社員に転身できるかもしれません。

しかし、4月からフリーランスデビューしたものの仕事を獲得できなければ、5月、6月、7月と時間ばかりが経ってしまうことになります。

この場合、新卒後、空白期間ができてしまい、就活で不利になることもあります。

5.2 会社員よりも将来受け取れる年金が少ない

会社員や公務員と比べて、フリーランスは年金受給額が低い傾向にあります。フリーランスは「国民年金」のみに加入するケースが多いため、受給額は「厚生年金」などにも加入できる人たちと比べて低くなります。

厚生労働省年金局「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金・国民年金の受給額の平均額は以下になります。

【図表3】厚生年金・国民年金の受給額の平均額

出所:厚生労働省年金局「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」

国民年金の約5万円で1カ月生計を立てるのはなかなか大変なことです。

一方、同調査における厚生年金の全体の平均年金の月額は14万3973円となっています。国民年金と厚生年金では受給額に3倍近い差があるといえます。

5.3 クレジットカードの審査や住宅ローンの審査で不利

大学を卒業し、自分で生計を立てられるようになったら、「クレジットカードをつくりたい」「住宅ローンを組みたい」といった思いも出てくるはずです。

しかし、フリーランスは不安定な雇用形態であることから、金融機関の審査において不利といわれています。

会社員の友人と同じ年収であっても、その友人は審査にパスし、自分は落ちてしまうということもありえます。

6. まとめにかえて

フリーランスには「自由度が高い」「自分のスキルや才能を存分に発揮できる」といったプラスのイメージもあります。

しかし、フリーランスには正社員では考えがたいデメリットがあることも忘れてはいけません。

大学を卒業し、フリーランスになるのも1つの選択かもしれません。しかし、フリーランスになってみたものの「仕事がない」「収入が突然途絶え、貯蓄もない」といった事態に陥る可能性もあります。

職種にもよるもののフリーランスは経験こそ財産。年齢が若い方が有利ということは多くないため、企業で働く経験を若いうちにしておくのも選択肢として検討してみるのもよいでしょう。

参考資料

西田 梨紗