2. 2023年4月からスタートした「特例的な繰下げみなし増額制度」

2023年4月から「特例的な繰下げみなし増額制度」が開始されました。

2023年4月から開始した「特例的な繰下げみなし増額制度」

「特例的な繰下げみなし増額制度」図版

出所:日本年金機構「令和5年4月から老齢年金の繰下げ制度の一部改正が施行されます」

これにより、70歳到達後に「繰下げ申出」をせずにさかのぼって本来の年金を受け取ることを選択した場合でも、請求の5年前の日に繰下げ申出したものとみなされるようになりました。

つまり、増額された年金の5年間分を一括して受け取ることができるようになったのです。

2.1 「特例的な繰下げみなし増額制度」の対象者

特例的な繰下げみなし増額制度の対象となるのは、次のいずれかの要件を満たす方です。

  1. 昭和27年4月2日以降生まれの方(令和5年3月31日時点で71歳未満の方)
  2. 老齢基礎・老齢厚生年金の受給権を取得した日が平成29年4月1日以降の方(令和5年3月31日時点で老齢基礎・老齢厚生年金の受給権を取得した日から起算して6年を経過していない方)

また、制度を利用できるかどうかや、利用した場合の見込額等については、年金事務所等で個別に相談も可能です。

3. 「特例的な繰下げみなし増額制度」の注意点

一見、選択肢として魅力的にもみえる「特例的な繰下げみなし増額制度」ですが、注意点もあります。

80歳以降に請求する場合や、請求の5年前の日以前から障害年金や遺族年金を受け取る権利がある場合、特例的な繰下げみなし増額制度の適用外とされます。

また、過去分の年金を一括して受給することにより、過去にさかのぼって医療保険・介護保険の自己負担や保険料、税金等に影響のある場合があるので注意が必要です。

特に注意したいのは、税金や社会保険料への影響。年金の金額に応じてこれらの金額が決まるため、遡って適用されれば追加で支払うお金が生まれるかもしれません。

請求する場合は、事前に年金事務所等で見込額を確認した上、十分検討を重ねてから手続きを進めた方がよいでしょう。

4. 2024年「年金支給日」カレンダー:次回の支給日をチェック

公的年金は2ヶ月に1度支給されます。偶数月の15日(土日・祝祭日の場合は直前の平日)が支給日です。

2024年:年金支給日カレンダー

2024年:年金支給日カレンダー

出所:日本年金機構「Q年金はいつ支払われますか。」をもとにLIMO編集部作成

年金支給日:支給対象月

  • 2024年2月15日(木):2023年12月分・2024年1月分
  • 2024年4月15日(月):2024年2月分・2024年3月分
  • 2024年6月14日(金):2024年4月分・2024年5月分
  • 2024年8月15日(木):2024年6月分・2024年7月分
  • 2024年10月15日(火):2024年8月分・2024年9月分
  • 2024年12月13日(金):2024年10月分・2024年11月分

現役時代の給与は、毎月振り込まれることがほとんどでしょう。一方、年金は前々月と前月分がまとめて支給されます。

2ヶ月分がまとめて振り込まれますので、使い過ぎないよう管理を徹底していきましょう!

5. 自分の貯蓄状況にあった年金受給の選択を

2023年4月1日に施行された老齢年金の繰下げ制度の一部改正により、開始した「特例的な繰下げみなし増額制度」。

さかのぼって本来の年金を受け取るときには請求の5年前の日に繰下げ申出したものとみなし、増額された年金の5年間分を一括して受け取ることができるようになりました。

ただし、手続き時点から5年以上前の年金は時効により受け取ることができない点には注意しましょう。

年金生活に向け、年金の受け取り方も重要となります。あらゆる方法を知っておきましょう。

参考資料

荒井 麻友子