2. 必要な老後資金は前提条件次第

前述の通り老後2000万円という数字は、2017年の高齢夫婦無職世帯の平均的な家計収支を基にした数字です。

前提条件が変われば、必要な老後資金も変わってきます。

2.1 単身世帯の必要資金は1500万円以下

前述の家計調査報告によると、高齢単身無職世帯(60歳以上の単身無職世帯)の家計収支は次の通りです。

  • 収入:11万4027円
  • 支出:15万4742円
  • 赤字:4万715円

老後期間を30年とすると、必要な老後資金は次の通りです。

  • 必要な老後資金=4万715円×12か月×30年=約1466万円

単身世帯の場合は、2000万円も必要ありません。

2.2 老後期間が20年ならば約1300万円

厚生労働省の「令和4年簡易生命表」によると、65歳男性の平均余命は19.44年、65歳女性は24.30歳です。

老後2000万円は65歳からの老後期間を30年間と長めに設定したため、金額が大きくなっています。

老後期間を20年と設定すると、夫婦世帯に必要な老後資金は次の通りです。

  • 必要な老後資金=5万4519円×12か月×20年=約1308万円

老後期間の設定次第で、必要な老後資金は700万円も変わってきます。

2.3 国民年金の加入者はより多くの老後資金が必要

国民年金の加入者は、20歳から60歳まで保険料を毎月納付しても年金額は6万8000円(2024年度)です。

夫婦の年金額の合計が13万6000円、生活費を26万3717円と仮定すると、毎月12万7717円の赤字です。

赤字を貯蓄で賄う場合、必要な老後資金は次の通りです。

  • 必要な老後資金=12万7717円×12か月×30年=約4598万円

老後資金は、2000万円の倍以上です。

国民年金加入者はより手厚い老後準備が必要です。

このように、必要な老後資金は前提条件によって大きく異なります。

次章では、最新統計に基づいた老後資金を紹介します。

3. 最新統計では老後資金はいくら必要?

2023年の家計調査報告では、65歳以上の高齢夫婦無職世帯と高齢単身無職世帯の家計収支は次の通りです。

(高齢夫婦無職世帯)

  • 収入:24万4580円
  • 支出:28万2497円
  • 赤字:3万7916円

(高齢単身無職世帯)

  • 収入:12万6905円
  • 支出:15万7673円
  • 赤字:3万768円

老後期間を30年と設定すると、必要な老後資金は次の通りです。

  • 高齢夫婦無職世帯:3万7916円×12か月×30年=約1365万円
  • 高齢単身無職世帯:3万768円×12か月×30年=約1108万円

必要な老後資金は夫婦世帯が約1400万円、単身世帯が1100万円となり、前回試算よりも減りました。

4. まとめにかえて

必要な老後資金は2000万円と言われていましたが、最新統計では高齢夫婦無職世帯で約1400万円、単身世帯は約1100万円です。

ただし、実際の必要額は一人ひとり異なります。

老後計画を立てるときは、次の3つを想定して必要な老後資金を試算してみましょう。

  • 老後の収入(公的年金の見込額など)
  • 老後の支出
  • 老後期間

貯蓄や年金で老後生活を賄えない場合は、老後も仕事を続けることや生活費を抑えることを考えてみましょう。

参考資料

西岡 秀泰