あなたが資産運用でいつも失敗するのは、「正しい」資産運用は面白くないからかもしれない

この記事の読みどころ

資産運用や投資というと、ハラハラドキドキして、面白いものというイメージがあります。

しかし実際には、「正しい」資産運用は、面白いものではありません。資産運用はギャンブルではないからです。

資産運用は正しくやりたいが、面白くないと続かない、という人はどうしたら良いかを提案します。

「正しい」資産運用と「面白い」資産運用の違い

正直に言えば、私が学生の頃、または社会人になって間もない頃は、機関投資家の資産運用能力を小バカにしていました。今でもそういう部分は多少はあるのですが(笑)、しかし日本生命という会社に15年勤めて、リスク管理の緻密さや理論的背景の押さえ方などは「やはり凄い」と思わざるを得ません。

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一方で、自称「個人投資家」の中には、どう見てもギャンブルとしか言えない投機に挑み、大ヤケドをしている方を多く見かけます。もちろん、それで大儲けをしている人もいるのですが、そもそも「大儲けをする」という発想が、ギャンブルのそれであり、資産運用の発想ではないのです。

正しい資産運用とは、自らが取ることのできるリスクの範囲の中で、期待リターンを最大化することです。もう少し言えば、資産運用の目的、つまり「いつまでにいくら必要か」を明確にした上で、です。ここからはみ出る行動は、本質的な意味での資産運用ではなくて、遊びです。

ポートフォリオとリスク分散投資

いつまでにいくら必要かがわかれば、期待リターンが決まります。年率1%で回せば良いのなら、運用はそんなに難しくありません。超長期の国債を買っておけば良いのですから。2〜3%を目指すなら、社債や海外の国債を組み合わせても良いでしょう。いずれにしても、債券だけでも達成可能な目標です。

利回り5%を目指すなら、不動産投資や株式投資も考えないといけないでしょうね。将来、海外でお金を使う予定があるのなら外貨も組み合わせましょうか。とまあこのように、期待リターンと備えるべきリスクによって、ポートフォリオ(資産構成)は決まるわけです。

もちろんここでは、どのリスクを重要視するか、世界経済の行方をどのように評価するかなど、裁量の余地があります。実はこれこそが資産運用の能力であり、個別売買の銘柄選択やタイミングは、安定的なリターンをあげる上ではさほど本質的ではないということになります。

敗者のゲーム

ポートフォリオは決まりました。さあこれからが腕の見せどころだと。ところが、実はこの時点で、つまり資産構成を決めた時点で投資結果の8割近くが決まるという調査結果もあります。この先の銘柄選択は、実は2割くらいの効果しかないんですね。

さらにショックなことに、『敗者のゲーム』(チャールズ・エリス著、日本経済新聞出版社)で著者は、

「市場はプロが戦う場であり、一人だけ勝ち続けるのは難しい。個別銘柄の選択などはコストの割に効果はほとんどない」

と言っています。

これ、古典ですが資産運用を考える上では名著なので、ぜひ読んでみてください。本著の中で、ファンドマネージャーが悪戦苦闘するアクティブ投資は、マーケットの動きと連動するインデックス投資に勝てない、という趣旨のことが述べられています。

もちろん、例外はありますよ。ウォーレン・バフェットのような天才的なファンドマネージャーの存在です。あなたがその天才であるか、もしくは、そういう天才の存在を知っていてかつ世の中にはまだそれが知られていないとき、アクティブな銘柄選択は意味があることになります。つまり、ほとんどそんなケースはない、ということです。

個人投資家は面白さを求めて、失敗する

よって、どの国のどの資産に、どういう割合で資産を分散するかを決めたら、その後は手数料の安いインデックス型のETF(上場投信)を使えば良いと思います。それだけで、完全な分散投資のポートフォリオが作れます。投信1への寄稿記事でこういうことを書くと「ポジショントークだ」と言われてしまいますが、本当にそう思うので仕方ないですね。

それで、そもそもここまでの話を個人投資家の多くはご存じないのではないかと思うのですが、仮に知っていたとしても、銘柄選択と売買タイミングに賭ける「ギャンブル」は、なくなりはしないでしょう。なぜなら、それが面白いからです。

何か事件が発生し、暴落した銘柄を「腐った◯◯を、買い叩く!」と叫びながら底値で買いを入れ、絶妙なタイミングで売り抜ける。なんて自分は賢いのだろう。面白いですよね。生きている意味を噛み締める瞬間です。

でもこれ、運用のパフォーマンスにはほとんど関係ないんです。おそらく、同じ数だけ、あるいはそれ以上、その「勝負」が裏目に出て、失敗もするからですね。

面白いことを否定はしません。遊びをせんとや生まれけむ。面白いことに取り組むことで勉強にもなりますし、人類は発展するのかもしれません。しかし、こと資産運用においては、人は面白いことを追うあまり、失敗して高い「授業料」を支払っているように思います。

では、どうすれば良いのか

かといって、機械のように冷静で沈着な、面白くない行動を繰り返せと言えば、それが資産運用を成功させる(リスク対比の期待リターンを最大化させる)としても、人は機械ではないので続かないんです。またいずれ面白い方に流れ、失敗し、授業料を支払うことでしょう。

それならいっそのこと、分散投資をしているアセットの中に、1つだけは面白さを追究しても良いハコを作っておけば良いのではないでしょうか。例えば国内株の中で数十万円、「遊び枠」を作ります。その中では、何をやっても許される、と。言わばガス抜きです。

逆に言えば、それ以外の大部分の投資については、きちんと正しい投資手法を学び、ガチガチにルールを決め、それに従うということです。面白くも何ともない、インデックス投資です。資産運用は資産運用、ギャンブルはギャンブルときちんと区別することから、本当の資産運用は始まるのです。

それでは、また。夢とお金の専門家、シナジーブレインの安田 修でした。

【2015年10月21日 安田 修】

■参考記事■

>>失敗しない投資信託の選び方:おさえるべき3つのNGと6つのポイント

>>長期投資を始めたい人向きのお買い得インデックスファンドとは

 安田 修
  • 安田 修
  • ㈱シナジーブレイン
  • 代表取締役

(社)人生計画協会」代表理事、中小企業診断士、GCS認定プロフェショナルコーチ、証券アナリスト、AFP他。

北海道大学卒業後、日本生命に15年勤務。企業財務を中心に経験。ビジョンとキャッシュフローの「全員経営」で中小企業の経営をサポートする一方、サラリーマンの起業を支援するための会員制度「人生計画フォーラム」を主催。