企業倒産に関するデータから株式市場の中期トレンドを読む―今後の注意点は?

この記事の読みどころ

信用情報調査機関が発表する企業倒産に関するデータは、投資判断の一助となります。

倒産は「弁済しなければならない債務が弁済できなくなった状態」と定義されます。利益が出ていても倒産する場合もあれば、赤字が続いても倒産しない場合もあります。

倒産件数は、政府の景気対策や金融当局の金融政策の影響を受けますが、うまく加工すると中期のトレンドを示すデータとなります。直近は、倒産件数の12か月移動平均の前年同月比のマイナス幅が縮小傾向にあるので、頭の片隅に留めておきたいところです。

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何かと参考になる企業倒産に関するデータ

投資や資産運用での判断の参考に、いろいろな経済指標が使われます。官公庁またはその関連団体から出されるものが多いですが、民間から出るものでも、何かと参考になるデータがあります。

その1つでとして今回ご紹介するのが、信用情報調査機関が発表する企業倒産に関するデータです。

そもそも「倒産」とは

具体的にデータをご紹介する前に、そもそも会社の「倒産」について、整理しておきたいと思います。

会社の「倒産」といって思い浮かべやすいのは、「事業がうまくいかずに赤字が続き、銀行に融資をお願いしても断られ、にっちもさっちもいかなくなって、会社がつぶれる」という状況かと思います。小説やテレビドラマに出てくるのは、たいていこのパターンです。

「倒産」という言葉は、実は法律上では明確に定義されていません。ですから、厳密には法律用語ではありません。あくまで一般用語として、「弁済しなければならない債務が弁済できなくなった状態」のことを指すと言われています。この定義に基づけば、「事業の赤字」は「倒産」とは直接の関係はありません。

「黒字倒産」はその典型例です。事業はなんとか回っていて、損益上は利益が出ているのに、資金繰りに問題が生じて現金が不足し、約束の期日までに借入金が返済できずに立ち行かなくなったというケースです。

逆に、事業は赤字続きなのに、そもそも借入金がなく、過去の利益の蓄積があるので会社としてずっと存続しているというケースもあります。事業が赤字続きでも、どういうわけか融資を受け続けられているとか、補助金で資金繰りが回っている、ということもあります。このケースでは、ただちに「倒産」とはなりません。

繰り返しになりますが、支払わなくてはいけないものがあって、その期日に支払えなくなると、「倒産」ということになります。そして、払えなくなった金額がいくらなのかが重要なため、倒産を伝える報道では、ほぼ必ず、「負債総額はいくら」という言葉がついてきます。

2社が毎月公表

企業倒産に関するデータには、東京商工リサーチの「全国企業倒産状況」、帝国データバンクの「倒産集計」の2つがあります。毎月中旬頃に、前月のデータが発表されます。「倒産」に含める対象に違いがあるためか、倒産件数は常に東京商工リサーチのデータの方が多くなります。

両社とも、倒産件数と負債金額合計の2つが毎月公表されます。このトレンドを見ることで、景気や金融情勢の動向を把握する一助となります。

ただし、これらの数値の取り扱いは、以下の点で注意が必要です。

1. 大型倒産が発生すると、負債金額合計の数値は大きくぶれます。

2. 倒産には季節性があります。3~4月の年度末をまたぐ頃、11~12月の企業の資金需要が増える頃は、他の月に比べて倒産が多くなる傾向にあります。

3. 政府の景気対策の影響を受けます。景気が悪いと倒産が増加するという傾向があるのは確かですが、政府が景気対策を行うことにより、倒産件数が低く抑えられることがあります。こうした景気対策は期間限定であることが多いため、逆に景気が上向いてきた時に景気対策が終了し、倒産件数はかえって増えることもあります。

4. 3とも関係しますが、金融政策の動向の影響も受けます。倒産の多くは、銀行からの借入金が返済できないというケースですが、銀行がお金の蛇口を閉めると、倒産は増加します。以前、「貸し渋り」や「貸し剥がし」が社会問題となったこともあります。蛇口の閉め加減は、金融当局の方針次第の部分が大きいです。

倒産件数の12か月移動平均の前年同月比の推移を見てみましょう

2社のデータのうち、常に件数が多い方の東京商工リサーチの「全国企業倒産状況」を用いて、毎月の倒産件数の12か月移動平均をとり、その前年同月比の推移を見てみることにします。12か月平均をとっているのは、大型倒産の影響や季節要因の影響を少なくしたいためです。

倒産件数の12か月平均の前年同月比とTOPIXの推移
(出典)東京商工リサーチ「全国企業倒産状況」より筆者作成

倒産件数の前年同月比がプラスということは、前年同月より倒産件数が増えている状況ですから、世の中としては、あまり景気は良くないと言えます。マイナスの時はその逆で、景気は悪くないことを示しています。

2001年以降の3回の転換点

見ていただきたいのは、プラスとマイナスが転換するところです。実は、2001年以降3回しかありません。

1. 2002年12月のマイナス転換

その後、TOPIXは2003年3月に底打ちした後、大きく上昇しました。

2. 2006年4月のプラス転換

それまでTOPIXは大きく上昇してきましたが、このプラス転換が出た後は、2007年7月まで上値が重い展開が続き、その後、サブプライムショックやリーマンショックにより大きく下落しました。

3. 2009年12月のマイナス転換

リーマンショックから1年強が経過した頃で、株価への信頼度は高くない状況でしたが、このマイナス転換が出た後、TOPIXは下値が限定的なボックス圏での推移となりました。なお、ちょうど2009年12月より、リーマンショック後の中小企業の資金繰り支援のため、中小企業金融円滑化法が施行されました(当初は2011年3月まででしたが、2013年3月まで延長され、終了しました)。

直近の状況

2009年12月以降は、中小企業金融円滑化法に加え、東日本大震災後の中小企業支援の政策もあり、現在に至るまで倒産件数の前年同月比マイナスが続いています。しかし、ここ数か月は、そのマイナス幅が縮まってきています。

まとめ

12か月平均の倒産件数の前年同月比は、当面はマイナスの状況が続き、すぐにはプラス転換するとは考えにくいです。しかし、中小企業金融円滑化法の終了だけでなく、2014年以降、金融当局は企業の転廃業を促す方針に転換していると聞きます。無理に延命させないという方針になったとも言えます。

さらに、2016年に入りマイナス金利となったことで、銀行などの金融機関の融資姿勢にも変化が生じている可能性があります。今後の倒産件数の推移について、頭の片隅に留めておきたいところです。

【2016年3月31日 藤野 敬太】

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投信1編集部

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