ラップ口座に比べれば、手軽に始めることができ、手数料も割安

FinTech(フィンテック)という言葉を聞く機会が増えています。「Finance」と「Technology」の融合を意味する造語で、金融業務にITを活用することにより、新しいサービスが創出されると期待されています。

ロボアドバイザー(ロボット・アドバイザー)は、その一つで、投資家のリスク許容度や運用方針に応じて適切なポートフォリオを構築するだけでなく、金融商品の買付や売却、ポートフォリオのリバランスなどもロボアドバイザーに任せることができます。

日本では現在、「お金のデザイン(THEO)」、「エイト証券(8 Now!)」、「ウェルスナビ(WealthNavi)」の3社がロボアドバイザーのサービスを提供しています(カッコ内はロボアドバイザーサービスのブランド名)。

いずれも、ポートフォリオを構成する資産は国内外のETF(上場投資信託)に限られています。流動性が高く、買付や売却がしやすいことや、株式などと比較して銘柄選択が容易だかからだと思われます。

ロボアドバイザーの仕組みは、個人が資産運用を証券会社などに一任する「ラップ口座」に似ています。ただし、ラップ口座は一般的に富裕層を対象にしており、最低預入金額も1,000万円以上といった制限があります。手数料も高額です。

それに対してロボアドバイザーは、お金のデザイン=10万円~、エイト証券=約1万円~、ウェルスナビ=100万円~と、手軽に始めることができ、手数料も運用額の1~0.88%程度となっており、ラップ口座に比べれば手ごろな水準になっています。

大手金融機関のロボアドバイザーは、自社取扱いファンドのサジェストツール的な位置付け

米国ではロボアドバイザーの需要が高まっており、投資家の資金も集まっています。日本でも本格的に普及するか否かは未知数ですが、日本でも国内の大手金融機関がロボアドバイザー市場に参入しています。

みずほ銀行は2015年10月、ロボアドバイザーツール「SMART FOLIO(スマートフォリオ)」を導入しました。また、三菱UFJ国際投信も2016年3月、ロボアドバイザーツール「PORTSTAR(ポートスター)」の提供を開始しました。

これらは口座開設などが不要なため、早速筆者も使ってみると、ものの数十秒で、簡単な質問に回答するだけで、投資家一人ひとりのリスク許容度などに応じた最適な資産配分が示されました。

筆者が見たところでは、みずほ銀行のロボアドバイザーが提示してくれたのは「i-mizuho インデックスシリーズ」と呼ばれる21種のインデックス型ファンドの組み合わせであり、三菱UFJ国際投信のロボアドバイザーが提示してくれたのは「eMAXIS 最適化バランス」の5つのバランス型ファンドのうちの1本でした。

つまり、両社ともにロボアドバイザーツールの役目を、自社で取扱うファンドを顧客の特性に合わせて紹介することに置いているのです。紹介されているファンドはコスト競争力に優れたものであり、ロボアドバイザーの紹介機能は、特に資産運用初心者にとってはありがたいものです。今後の使い勝手の改善をさらに期待できそうです。

銘柄選びをコンピューターに任せられる時代は来るのか

ロボアドバイザーに限らず、コンピューター、中でも人工知能(AI)を活用し、銘柄選びを丸投げできる時代は来るのでしょうか。現状はまだ難しいでしょう。

欧米のみならず、東京証券取引所でもコンピューターを使ったアルゴリズム取引のシェアが増えていますが、その多くは1,000分の1秒単位の高速で自動売買を繰り返すことで利益を狙うといった手法です。あくまでもスピード勝負です。

「隠れた優良企業を発見し中長期的に投資する」といった観点でコンピューターを活用するには、もう少し時間がかかりそうです。

【2016年4月24日 投信1編集部】

■参考記事■

>>失敗しない投資信託の選び方:おさえるべき3つのNGと6つのポイント

>>ロボ・アドバイザーの資産運用初心者向け特徴と比較まとめ

 

LIMO編集部