108円/ドルは円高なのか? 日本経済の行方を絶対水準と相対水準で考える

この記事の読みどころ

4月と10月の平均気温を比べると、10月の方がかなり高く、体感差とは異なった印象があります。

現在の108円/ドルは、昨年夏から見れば大幅な円高ですが、3年半前から見れば尋常ではない円安です。

為替レートは、その絶対的な水準と、相対的な水準とに分けて考える必要があります。

4月は10月よりも寒い

4月も中旬になると満開だった桜も散って、いつの間にか葉桜になっており、初夏の訪れさえ予感させます。ところで、唐突ですが、皆さんは4月と10月、どちらの方が暖かいと思いますか?

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答えは10月です。東京(都心部)の平均気温を見ると、4月は13.9℃であるのに対して、10月は17.5℃となっており、約4℃弱の気温差があります(気象庁のホームページより)。もちろん、上旬と下旬では気温差があるでしょうが、事実として「10月は4月より暖かい」ということが言えます。

春が深まり夏に向かい始める4月は暖かいと感じやすい

この結果を、意外と感じた人は少なくないかもしれません。その理由は恐らく、春が深まり夏に向かい始める4月の方が、秋が深まり冬へと向かい始める10月より暖かいという印象が強いからだと思います。

確かに、夏の薄着に何枚かの上着を羽織っている10月よりも、冬の厚手のコートを片付けてしまう4月の方が暖かいと感じてしまうのかもしれません。しかし、それは体感差であり、先入観とも言えます。今回の例以外にも、このような先入観は少なくないように思われます。

円高進行で懸念される日本経済の行方

さて、前置きが長くなりましたが、2月上旬から円高が進んでおり、最近は一時107円/ドル台の前半を付けました。これを受けて、世間では“円高で日本経済は大変なことになる”、“2017年3月期は大きな危機だ”という悲観的な見方に染まっているように思われます。

確かに、今の為替レートが続けば、輸出関連企業を中心に2017年3月期業績が大きな影響を受けるのは避けられません。とても無傷では済まないでしょう。こうした状況を踏まえ、株価も下落が続いています。

108円/ドルは円高なのか?

しかし、ちょっと待ってください。108円/ドルという為替レートは円高なのでしょうか?

出所:SPEEDAをもとに著者作成。為替相場の月中平均レートを採用

昨年夏から見れば大幅な円高

去年の為替(円ドルレート)は、5月~9月に掛けて平均123円/ドルの水準が続き、何回か125円/ドルを超える円安局面がありました。また、今年1月末に日銀がマイナス金利導入を発表した直後には、122円/ドルに迫る場面もありました。

これらの為替水準から見れば、現在の108円/ドルは、間違いなく大幅な円高と言えます。

3年半前から見れば尋常ではない円安

しかし、時期が少し前になりますが、2年前の2014年4月は102円/ドル、3年前の2013年4月は97円/ドル、そして、アベノミクスが始まる直前の2012年10月は79円/ドルでした。

これらの為替水準から見れば、現在の108円/ドルは、間違いなく円安です。特に、3年半前の80円/ドルを切っていた水準から見れば、尋常ではない円安と言えます。

輸出企業はコストダウンが出始めるまでやや時間を要する

自動車メーカーや精密機器メーカーは、80円/ドルを切る超円高時に大幅な業績悪化を強いられました。その時に経験した苦労を思えば、現在の108円/ドルは問題ない為替水準のはずです。ただ、2016年3月期(平均レート120円/ドル)と比べれば採算は悪化します。

また、円安が進行したこの3年半の間に、人件費や販売費など様々なコストが増加しています。設備投資を増加したことによる償却負担もあるでしょう。こうして嵩んだコストは、短期間で減らすことは難しいのが実情です。

しかし、徐々にコストダウンが効いてくれば、108円/ドルでも輸出採算が改善していくのです。恐らく、2017年3月期は難しいとしても、2018年3月期になると120円/ドル時と同じくらいの採算改善が期待できます。

絶対水準と相対水準に分けて考えよう

したがって、巷で言われている悲観論は、明らかに行き過ぎと言えるのではないでしょうか。4月と10月の気温に対する“体感差”のように、まずは現状の為替レート108円/ドルの絶対的な水準と、それ以前との相対的な水準に分けて考える必要があると言えましょう。

もちろん、今後の為替レートの推移には十分に注意する必要があることは言うまでもありません。

【2016年4 月13日 投信1編集部】

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