下がり始めたパロアルトの住宅価格、シリコンバレーの不動産に変調?

2016年第1四半期の住宅中間価格は5%ダウン

この3月で終わった2016年第1四半期のデータを見ると、パロアルトの住宅価格が調整し始めたことがわかります。ただし、これは構造的な調整に入ったからなのか、あるいは一時的な需給のアンバランスなのかは、まだ見極める必要があります。

第1四半期のパロアルトにおける新規住宅の物件数は全部で154件と、前年同期より20%も増えました。それと同時に需要側の活気が少し収まっていた結果、中間価格が前年同期比で5%下がり、237万ドルになりました。2010年に住宅価格がボトムアウトして以来、初めて統計上で価格が下がったことになります。

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5% という数字は大きくはないように見えますが、金額上のインパクトは決して無視できません。そして、2001年と2009年の調整ともに10%前後に止まったことからしても、5%の下げはそれなりの影響があります。買い手間の競争の激しさは去年の春にすでにピークアウトした実感があります。

供給の増加は幅広い価格帯にわたるため、この売買中間価格の下落は統計上のサンプルの変化ではなく、実際の一時的な供給の増加と需要の調整を反映していました。

事実、供給の増加につれ、買い手側が明らかに購入を急がなくなりました。つまり、検討している家に高いオファー価格を出さなくなったのです。たとえその物件を逃したとしても、次に似たような家が市場に出てくる可能性がまだあるからです。

同時に、市場の変化に鈍感な売り手が従来通りの高い価格で家を市場に出すと、今までの1週間では売れなくなり、結局は値下げをしなければならない場合もあります。この第1四半期は、住宅が市場に出てから売買が成立するまでの期間が19日と、前年同期より6日間も長くなりました。

高額オファーが出る物件も健在

しかし、買い手が一気に消えたわけでもありません。時折、需要側の資金力の大きさを思い切り知らされる売買もあります。たとえば、パロアルトの中でも高額なオールドパロアルト(Old Palo Alto)やクレセントパーク(Crescent Park)に立地のいい広めの土地が出てくると、400万ドルや500万ドルの現金オファーがすぐに出てきます。

私は3月に顧客の代理として、480万ドルで売りに出ていたオールドパロアルトにある1万スクエアフィート(約930平米)の土地に550万ドルのオファーを出しました。競争相手は大手テック企業の創業者家族2人で、結局その家はドル560万ドルでそのうちの1人に買われました。

ちなみに、土地と言っても、パロアルトでは未開発の土地はほとんどなく、買い手側が古い家を取り壊し、新たに200万から300万ドルをかけて新しい家を建てるケースが多いです。

パロアルトの周辺はまだ調整の傾向なし

では、パロアルト周辺の町はどうだったでしょうか。パルアルトとは逆に、ロスアルトス(Los Altos)では第1四半期に供給が14%も減り、売買中間価格は前年同期とほぼ同じ264万ドルとなりました。特にロスアルトス北部の地域は、供給の減少により、シリコンバレーの高価格帯地域の中でも買い手側の競争が一番激しい地域となりました。

また、フェイスブックの本部があるメンローパーク(Menlo Park)も堅調さを維持していました。供給が増えたにもかかわらず、売買中間価格および1平米当たりの単価ともに上昇していました。

パロアルトの南側にあるマウンテンビュー(Mountain View)とサニーベール(Sunnyvale)は、価格の低さから、売買件数は一貫してパロアルトより遥かに多くなっています。これらの地域では、初めての住宅取得を狙う若い家族による需要が極めて高いのです。

100万ドルから200万ドルの価格帯では、1つの家に対して大体10前後のオファーがあり、競争の結果、1平米当たりの単価がパロアルトより高くなるケースも多く見られます。まだ売り手市場のシリコンバレーにおいて、住宅価格帯が低ければ低いほど、買い手は大きなプレミアムを払わざるを得ないのです。

パロアルトの住宅価格調整は構造的なものか?

では、パロアルトの住宅市場における足元の調整は、シリコンバレー全体の先行指標となり得るのでしょうか? 住宅市場と株式市場の大きな違いの一つは、価格の変化がマーケットにもたらすインパクトの違いです。株が暴落すれば、投げ売りが出てきます。

一方、住宅の価格が下がったり、あるいは下がる見通しがある場合、投資物件が市場に多く出回ることが増えても、実需のある場合は、いったん家を売却して賃貸で次の買うタイミングを待つ人はほとんどいません。家を売却するタイミングは、転勤、出産、離婚、死亡など、むしろ人生において大きな変化がある場合が多いのです。

パロアルトのような新規開発がない土地の場合、供給の予測はかなり難しいですが、今のところ、需要に本質的な変化がなければ、短期的に調整があっても、構造的に住宅価格が下がるリスクは小さいと言えるでしょう。

参考:シリコンバレーの不動産に関する統計データ
【2016年5月11日 Jiang Xin(ジャン・シン)】

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Jiang Xin

中国生まれ。早稲田大学商学部卒業後、メリルリンチ証券・投資銀行部門の東京とパロアルトで勤務。その後、ペンシルベニア大学ウォートン校にてMBAを取得。
2005年から2013年まで、日本のフィデリティ投信とサンフランシスコにあるマシューズ・インターナショナル・キャピタル・マネジメントで日本株を含めたアジア株のアナリストとして従事。
2013年からパロアルトを中心に、シリコンバレーで不動産の仲介と住宅の開発に専念。7歳になる娘の母親でもあり、シリコンバレーの住宅と教育事情に詳しい。