2. 年金を受給しながら働く際は在職老齢年金に注意

65歳以降も年金を受給しながら働くことで、収入アップだけでなく年金額の増額も期待できます。

しかし、収入や年金額によっては年金の一部または全部が支給停止になってしまう「在職老齢年金制度」に注意が必要です。

2.1 在職老齢年金とは

60歳以降に在職(厚生年金保険に加入)しながら受給する厚生年金を「在職老齢年金」といいます。年金受給額(基本月額)と毎月の給与(総報酬月額相当額)に応じて、年金の一部または全部が支給停止される制度です。

なお、「基本月額」とは厚生年金の年額(加給年金を除く)を12ヵ月で割った金額のことで、1ヵ月あたりの年金額のことをいいます。

「総報酬月額相当額」とは、毎月の平均給与額に直近1年以内に支払われた賞与等を12ヵ月で割った金額を合計した金額です。

2.2 在職老齢年金の計算方法

在職老齢年金では、基本月額と総報酬月額相当額との合計額が「48万円以下」なのか「48万円超」なのかによって、支給停止が行われるかが決まります。

在職老齢年金の計算方法

出所:日本年金機構「在職老齢年金の計算方法」を元に筆者作成

基本月額と総報酬月額相当額の合計が48万円以下の場合は、支給停止は行われず年金は全額支給されます。

しかし、基本月額と総報酬月額相当額の合計が48万円を超える場合は、「基本月額-(基本月額+総報酬月額相当額-48万円)÷2」で求めた金額が支給停止されます。

2.3 年金額14万円を受給しながら20万円を稼いだ場合

平均的な厚生年金額14万円を受給しながら毎月20万円を稼いだ場合の在職老齢年金をシミュレーションしてみましょう。

基本月額が14万円、総報酬月額相当額が20万円なので合計34万円となり、48万円以下なので厚生年金は全額支給されます。

基本月額が14万円の方は、総報酬月額相当額が34万円(48万円-14万円)以下であれば支給停止されることはありません。しかし、34万円を超えてしまうと、超えた分の半額が支給停止の対象になります。

3. まとめにかえて

65歳以降も厚生年金を受給しながら働くことで、収入が得られるうえ厚生年金受給額をアップさせることも可能です。

ただし、基本月額と総報酬月額相当額の合計額が48万円を超えてしまうと厚生年金の一部または全部が支給停止となってしまいます。

65歳以降も働く場合は、基本月額と総報酬月額相当額の合計が48万円を超えないように調整すると、年金の支給停止を回避できます。

参考資料

木内 菜穂子