“サラメシ”から考えるルネサスの将来―豊洲の社食が再成長の原動力に?

ルネサスエレクトロニクスを訪問取材

先日、決算後の取材でルネサスエレクトロニクス(6723)の本社を訪問した際に、社員食堂の見学もお願いしたところ快諾していただきました。中井貴一さんのナレーションで日本各地の働く人の昼ごはんをレポートするNHKの「サラメシ」のように、うまくお伝えできるかはわかりませんが、今回の訪問記は食レポからのスタートです。

ランチAを食べてみる

当日のメニューは、ランチAが赤魚の醤油煮(700円)、ランチBが牛肉のプルコギ仕立て(700円)。そのほかに、欧風カレー・スープ付き(500円)、ミックスフライ・ごはん・味噌汁付き(500円)、自家製野菜かき揚げ・うどん or そば・小ライス付き(400円)、有機ミートソースパスタ・ミニサラダ付き(600円)がありました。料金は社員も社外の訪問者も同じです。

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筆者は、ランチAを食べてみましたが(支払いはsuica利用)、素材のそのものの味が感じられ、炭水化物や油が少ないため非常にヘルシーなランチであるという印象を持ちました。

社員食堂で700円は少し高いかなと感じましたが、この食堂を運営している大地を守る会とトラベルカフェが丸の内で運営している「Daichi & Travel cafe」のランチプレートは1,200円でしたので、それと比べればリーズナブルなのかと思い直しました。

なお、広報の方によると、開業後はやはり少し高いということで一時的に利用者が減少した時期もあったそうですが、最近ではヘルシーさを考慮したうえでのコストパフォーマンスが評価されて客足は盛り返しているとのことでした。筆者は同社のある豊洲の近くに住んでいますが、この食堂は社員の方と同席しないと利用できないのがとても残念です。

なぜ、証券アナリストがルネサスの社員食堂に興味を持ったのか

筆者が同社の社員食堂に関心を持ったきっかけは、昨年(2015年)7月に本社を東京駅前の日本ビルから豊洲駅前の豊洲フォレシアビルへ移転した際に出されたニュースリリース「社員を元気に!大地を守る会とTravel cafeのコラボレーションレストランがルネサス エレクトロニクスの社員食堂に初出店」でした。

このリリースの中で、同社の柴田英利取締役執行役員常務兼CFOは以下のようにコメントしています。

「新オフィスでは、社員が元気になり、より生産性が高まるような快適な環境の構築を目指しました。特に、生活の根幹にある食に対して健康面から十分配慮をして、社員の日常生活の充実に貢献したいという思いから、安全でおいしい食材にこだわったメニューを提供する大地を守る会とトラベルカフェに社員食堂の運営をお願いしました。この明るく開放的な“社内カフェ”が、オフィスに活気を与え、これまで以上に創造的な仕事につながっていくことを期待しています」。

同社を長いことウォッチしてきた筆者にも、リストラ続きで社員の方が疲弊しているのではないか、あるいは、新しいことへのチャレンジ精神が減退してしまっているのではないか、という危惧がありましたので、このリリースには大変関心を持ちました。この試みが実際に大きな成果をもたらすかはともかく、こうした仕掛け作りは価値ある挑戦ではないかと感じたからです。それで今回、自分の眼で見てみることにしたのです。

また、この社員食堂はシリコンバレーの開放的なカフェをイメージして設計されています。明るい雰囲気で社員同士の会話も弾んでいるように見受けられました。豊洲本社での取り組みが他の事業所にも広がって、ルネサスエレクトロニクス全体がヘルシーで明るく成長していくことを期待したいと思いました。

ルネサスエレクトロニクスの今後の注目ポイントは?

2016年3月期は、非注力分野からの撤退影響等により売上高は減収見込みですが、営業利益は3年連続の黒字、純利益は2年連続で黒字が見込まれ、これまでの生産拠点の整理統合や人員削減などのリストラ効果により黒字体質への転換が進んでいます。

やや気掛かりな点は、東日本大震災後のデザイン・イン喪失の影響の顕在化で自動車向けの売上が一時的に減少する可能性や、非注力製品の撤退に備えた作り貯めによる稼働益が今後は減少に転じることです。

このため、2017年3月期は一時的に業績が停滞する可能性がありますが、一方で、2014年からサンプル出荷を開始した自動車向け40ナノマイコンの受注は好調の模様であり、出荷が始まる2017年頃からは、自動車の自動運転化の波に乗り、シェア回復が見込めそうです。

2012年に産業革新機構等から出資を受けた成長資金1,500億円もまだ手つかずで残っており、この活用にも期待が持てます。今後も引き続き、長期的な視点で、柔軟な発想と活気を取り戻したチームワークによる再成長への取り組みを注視して行きたいと思います。

【2016年3月3日 和泉 美治】

■参考記事■

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>>失敗しない投資信託の選び方:おさえるべき3つのNGと6つのポイント

和泉 美治

同志社大学文学部卒業後、エルコインターナショナル (現:京セラエルコ) に入社。英国バーミンガム大学にてMBA取得。
その後UBSフィリップスアンドドリュー証券 (現:UBS証券) に入社し、調査部にてエレクトロニクスセクターを担当。2002年より2013年までJ.P.モルガンにて産業用エレクトロニクス及び民生エレクトロニクスセクターを担当。
日本証券アナリスト協会検定会員。