手詰まり状態の中国経済。限界にきた景気刺激策

中国で今、何が起きているのか(2)

この記事の読みどころ

中国の経済政策は手詰まりの状態にあります。

鉄道や道路などは既にある程度整備されてきたので今後は大規模なインフラ投資は難しく、企業の設備も住宅も過剰なため、金融緩和も効きにくいと見ています。

経済構造を投資主導型から消費主導型に転換するには時間がかかると見ています。

手詰まり状態にある中国の経済政策

中国で今、何が起きているのか。今回は、中国がもはやインフラ投資に頼った景気刺激策を取りにくくなっており、中国政府の経済政策が手詰まり状態にあることについて述べたいと思います(前回の記事はこちら)。

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大規模なインフラ投資は「しない」のではなく「できない」

中国の景気対策といえば、中国国務院常務会議によると、2008年のリーマンショックの後にとられた4兆元(約76兆円)の景気刺激策が思い出されます。その大部分が鉄道や道路、住宅、四川大地震の復興などのインフラ投資に使われました。これが世界経済の復活に一役買ったのですが、一方で住宅バブルや地方政府向けの不良債権などの問題を抱える元凶ともなりました。

中国は景気が減速すると、利下げや預金準備率の引き下げなどの金融緩和を行い、次にインフラ投資を増やす財政政策を行うのが通例です。しかし今回の景気減速では、中国政府は大規模なインフラ投資をしようとしません。というより、できないと言ったほうが正確でしょう。

鉄道も道路も十分に整備されてしまった

中国の高速鉄道(新幹線)は、これまでの経済対策もあり建設が加速しました。2014年末で総延長距離が1.6万kmと日本の2,388kmを大幅に上回り、世界一になりました。北京・上海間をはじめ主要都市間の路線はかなりできあがっています。

また、高速道路も同じような状況で、中国交通運輸省によれば、2014年末で総延長距離が11.2万kmに達しており、世界一の規模になっています。一方、日本はというと、国土交通省によれば8,408km(2014年4月1日現在)という状況です。

広大な中国ですが、鉄道も道路も中国全土のネットワークができつつあり、今後の建設の余地が少なくなっています。無理にインフラ投資を増やすと、「無駄な公共投資」が地方政府向けの不良債権をさらに増やすことになりかねません。

金融緩和も効かない

金融緩和はどうでしょうか。中国は昨年11月から利下げや預金準備率の引き下げなどの金融緩和を繰り返していますが、景気への刺激効果はあまり出ていないように思います。

自動車や鉄鋼など、工場建設に莫大な資金が必要な重厚長大型の産業は、これまでの過大投資のツケが出て過剰な生産能力を抱えているという話もあります。また、住宅もバブルの崩壊で、北京や上海などの大都市を除くと膨大な在庫を抱えていると言われています。金融緩和をしても投資の需要が喚起されないという状況と言えます。

消費主導への経済の転換は時間がかかる

中国のGDP(国内総生産)は、その40%以上が企業の設備投資、インフラや住宅建設といった固定資産投資です。日本や米国などの先進国はこの比率が15~20%前後であり、中国政府がインフラ投資をけん引役に経済成長を進めてきた姿が見てとれます。

しかし、前述のようにインフラ投資も企業の設備投資も住宅投資も限界となると、消費主導型に経済構造を転換しなければならないのですが、これは一朝一夕にできるものではありません。この面からも中国経済は隘路にきているといえそうです。

【2015年10月9日 沢田 高志】

■参考記事■

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沢田 高志

慶応義塾大学大学院工学研究科修了。
日興證券(日興リサーチセンター)で化学、自動車などの日本株アナリストを経験した後、資産運用会社を経て三菱UFJ証券にて中小型株アナリストに。日経金融新聞のアナリスト・ランキング第3位〈2006年〉。
その後中国勤務を経て、東海東京証券の外国株アナリストに転身。中国、米国、アジアなどの産業・企業動向に通じている。